大宮アルディージャ
1 - 0
浦和レッズ
45+2
ズラタン
ベルデニック監督
「前半は、我々のテンポのいいダイナミックな攻撃に対し、浦和はうまくマッチングできていなかったように思います。ボールを奪われた後も素早く切り替え、効果的にプレッシャーを掛けることができました。後半に入って浦和は、点を取るためにパワーを入れてきました。我々は自陣で守備に追われる時間帯もあったものの、奪った後のカウンター攻撃を狙っていきました。」
アルディージャ公式
ペトロビッチ監督
「大宮は非常にコンパクトな良い守備をしてくるチームであることは分かっていました。後半は9人が下がる形で守備をしてきましたし、それを崩すのは簡単ではありません。サイドからのクロスもありましたが、その精度や中の選手のタイミングが合わなかったというものがありました。」
レッズ公式
■ 連続無敗記録を18試合に伸ばしついにJ1新記録を達成した大宮アルディージャ。この日の雨天のさいたまダービーは両チーム集中力が高く緊張感のある展開が続いたが、浦和レッズの不運の重なりと、それをしっかり生かしたアルディージャのしたたかさが印象に残るゲームだった。
レッズ3バックの虚を突くアルディージャの攻撃
まず勝利したホームのアルディージャの攻撃を振り返ると、今日は前節の4-2-3-1から
ズラタン、ノバコビッチの2トップに変え4-4-2の布陣を敷いてきた。そして前半からレッズの3バック(5バック)の守備をずらすために、ボールを右(左)サイド→中央→左(右)サイドと回して揺さぶりをかける攻めが効果的に作用していた。
特に
ノバコビッチが復帰したことで中には強力なツインタワーを置くことでレッズの
槙野や
森脇を自陣ゴール前の守備に貼りつかせ、長所である攻め上がりを許さないプレッシャーを与え続ける。そしてサイドからも
今井と
下平がオーバーラップすることでのサイドで数的優位を作り出す事に成功し、しっかりとクロスを上げられるスペースが出来ていた。
不利な攻撃と負傷者というアクシデント
レッズはこうして劣勢になりながらも少ない攻撃のチャンスを生かし攻めに繋げていたが、アルディージャの後ろ6枚(4DF+2ボランチ)に対して攻撃時は5人(前の3人+両サイドの2WB)と数的不利であり、しっかりと構築された守備が特徴のアルディージャ相手には個人技で仕掛けても突破はできずにいた。
鈴木や
阿部のサポートや後ろからの攻め上がりが欲しい状態のレッズだったが、アルディージャのカウンターを嫌ってかリスクを冒してまで上がろうとするものはなく、結果的にアルディージャの術中にハマッてしまった。それに加えて26分にアルディージャに相性のいい
原口が負傷退場を余儀なくされ、その後にもセンターバックの
那須が流血で一時的にピッチを離れ負傷者が続くこととなる。
勝負を決めた先制点
こうして危機を迎えたレッズに対して前半アディショナルタイム、アルディージャはここぞとばかりに再びチャンスを作り出す。左サイドで
渡邉、
富山、
下平の3人の華麗なダイレクトプレーでレッズ守備網を崩すと、最後は中で待ち構えていた
ズラタンがフリーで合わせついに先制することに成功。
レッズとすればしっかり守っていただけに一人少ない状況での終了間際の失点は悔しいものとなってしまった。逆にアルディージャのここしかないというチャンスをチーム全体が感じ取れていたところに非常にしたたかさを感じた。
攻のレッズ、守のアルディージャ
後半は1点を追いかけるレッズが明らかに攻撃意識を強める。これまで攻め上がりのなかった
槙野と
森脇のセンターバックの2人がゴール前まで顔を出しボールを受け攻撃に絡む場面が何度も見られた。こうして攻め続け、69分には
梅崎に替えて
関口、84分に
宇賀神に替えて
阪野を入れるなど策は打ったものの結果的には無得点に終わってしまった。
この原因として個人的に思うのはやはりトップに得点力のある選手が必要ではないかということだ。今季は
興梠がそのポジションに入ってはいるが、鹿島時代から見ていても単独でゴールを奪うという特徴を持っているとは思えない。
興梠は器用な選手であり裏ヘの飛び出しやボールの受け方は秀でたものを持っているのは間違いない。ただし一人で背負わせてゴールをこじ開けるタイプではない。それだけにパートナーとなり得る
原口の負傷交代はやはり今日の大きなポイントだった。もちろん交替で入った
マルシオもテクニックのある選手なのだが、レッズにはそういうタイプが多いだけに違いを生み出すことは出来ていなかった。
対して、この攻撃を受け流すアルディージャの守備は完璧だった。引いてしまった場合によくある、引きすぎて相手に攻撃を続けさせてしまうという状況を作らせなかったのは流石だった。
もう少し詳しく言うと、レッズの最終ラインのビルドアップに対してほぼマンツーマンと言ってもいいような前線からの積極的なチェイスを見せたことだろう。こうすることによって裏からのロングパスを防ぎ、それが遅攻に繋げることもできる。
さらにベルデニック監督は80分過ぎに
富山に替え
渡部、
渡邉に替えて
村上と、「守り通す」という意思を交替策でしっかり選手達に伝えるなどぬかりはなかった。
こうして無敗記録を打ち立てた大宮アルディージャ。これをどこまで続けられるか、そして仮に途切れたとしてもモチベーションを失わずに自分たちの力をどれだけ信じ続けられるかが今後は重要となってくる。
アルディージャ先制シーン詳細分析
①まず
梅崎のクリアボールを拾った
富山が簡単にクロスを入れずに後ろへ戻す。
②ここでボールを受けた
渡邉は
下平に渡す。この時
森脇はしっかりボールホルダーにマークに行き、ゴール前では
ズラタンと
ノバコビッチにしっかりマンツーマンも付いているが・・・
③
渡邉はパスアンドゴーで即座に走り出し、
マルシオを置きざりにする。
④そして、
下平が守備陣の上を越える弧を描くパスを送る。
⑤こうしてフリーでエリア内でボールを受けた
渡邉に対して
槙野と
鈴木の2人共がチェックヘ行ってしまった。
⑥こうして
ズラタンと
ノバコビッチがフリーの状態を作り出し得点を奪った。
こうしてみるとレッズ守備が悪かったようにも受け取れるが、このシーンは
富山→渡邉→下平→渡邉→ズラタンと5回とも全てワンタッチで繋いでの華麗な崩しで生んだゴールだったのでアルディージャを褒めるべきだと思う。
さらに言えばこの攻撃のシーンは右サイドの
今井のクロスから始まっている。つまり、「サイドから中央そしてサイド」と3バックの揺さぶりへの対応の弱さを研究したゴールだったとも言えるだろう。
前節
2013/04/13 J1 6節 セレッソ大阪 v 大宮アルディージャ
【フットボール戦略論】