セレッソ大阪
1 - 2
大宮アルディージャ
01
金澤
45
柿谷
85
ズラタン
クルピ監督
「(大宮は)先制点も含めて、個人の力でゴールが生まれたと思います。逆に我々のゴールというのは、試合前に相手を分析したうえで、相手の裏を狙っていくという戦術的要素がプレーに結び付いたゴールだったと思います。さらに同じような形で、2回3回と相手の背後をとって、ゴールを決めるチャンスがあったので、そこは狙い通りプレーはできていたと思います。」
C大阪公式
ベルデニック監督
「C大阪は、ボールを奪われた瞬間にスペースを与えてくれるので、そこをうまく突いていくよう狙っていたのですが、そうできなかったところはこれからの課題です。失点についても満足できません。あのような場面を想定しトレーニングを積んできたにも関わらず、その通りの形で点を奪われてしまったのは、課題が残る部分です。」
■ 大宮アルディージャが昨季からのリーグ戦無敗記録を17試合に伸ばし、J1の最長記録タイとなったこの試合。60分に
高橋が退場し一人少なくなりながらも、アウェイで4位セレッソ大阪に勝ち強さを見せつけた。
まず、このアルディージャの勝因はどこにあったのかと言えば、やはり守備重視になりながらも最後まで高いラインを保ち続けた点だ。これによって一人多いセレッソペースになりながらも、引いてドローという意識にならずに試合を進めることが出来た。この辺りの意識も負けていないという自信から来るものなのだろう。本来は最後までこのラインの高さを貫けるものではない。
アルディージャの戦術
では試合内容を振り返ってみよう。まずは開始直後に
扇原の縦パスをカットした
金澤が、センターライン近くから見事なロングシュートを決めて先制。このシュートは凄いとしかいいようがない驚きの1点だった。
対するセレッソも、アルディージャの高い最終ラインの裏を狙って後方からフィードを入れ、中盤では攻守にわたって運動量の多い
シンプリシオが中心となり攻撃を組み立てる。
しかしこういった攻撃に対しても、アルディージャはしっかりと対応が出来ていた。まず後方からのフィードに対しては、セレッソの前線の選手が飛び出してもしっかりとラインを整えることでオフサイドになるように上手くコントロールされていた。この結果、なかなかボールを触れない
エジノが下がってボールを受けに来るためアルディージャ側としては怖さは少なくなった。
さらに
シンプリシオの組み立てに対しても、セレッソのセンターバックから
シンプリシオへ縦パスが入るところへしっかりプレスに行くことで、前を向いてボールを持たせずに攻撃を遅らせしっかりと対応。逆に、こうした前からのプレッシングを積極的に仕掛けた
青木がボールを奪うと、そのまま攻め上がりショートカウンターに繫げてシュートチャンスに持ち込む場面も多々あった。
アルディージャの攻撃時に関しては、この
青木の攻め上がりに加えて今季新加入の
富山が効果的に動いていた。その効果的なプレーとは、まず下がってクサビのボールを受けると、その裏へ
チョ・ヨンチョルなど二列目の選手が飛び出していく、あるいは受けた後にもう一度ボールを下げて自らが裏へ飛び出していくといったプレーである。
同じく下がってボールを受けていた
エジノの場合とどこが違うかと言えば、
エジノはボールを受けるとそのままキープするも、そこから打開策がないため攻撃が停滞して守備を固められてしまうだけだったという所だ。この辺りにもう一工夫あればセレッソの攻撃も厚みが増すだろう。
ここまではアルディージャばかりを褒めてきたが、セレッソも1点は奪っているしすべてが機能していなかったわけではない。特に
扇原-
柿谷のホットラインで奪ったゴールは素晴らしかった。ロングもショートも精度の高いJ屈指のパサーである
扇原のダイレクトパス。そして
柿谷の裏への飛び出しからの、ワンタッチボールコントロールと決定力という特徴が生きたゴールだった。これを見て思ったのだが、
扇原の最初の失点時のパスミスもこれを狙った結果のミスだったのではないだろうか。
こうして前半1点ずつ取り合い、後半からは互いに中盤での潰し合いが激しくなり、前述した
高橋の退場後はセレッソが攻めアルディージャが守る時間が増えた。
それでも今日に関しては、体を張ってブロックし続けたアルディージャとセレッソの寄せの甘い守備の差がでてしまった。その結果が
ズラタンのゴールシーンだった。もちろんこのゴールはまず
ズラタンの巧さを褒めるべきなのだが、あそこで走りこんできた
ズラタンをフリーにしてしまったのは痛かった。
最後に采配について触れておくと、退場後にすぐ
チョ・ヨンチョルに替えて
片岡、追加点後に前線の
富山に替え投入と
ベルデニック監督が定石通りながらしっかりと守備を整えられる選手を入れてきた所はやはり負けないサッカーができている証なのだろうなと思わされた。
これで3位へ浮上したアルディージャは次戦2位の浦和レッズとのさいたまダービーと最高のカードが実現した。レッズがパス回しで崩すのか、アルディージャがそれを奪って得点へ繋げるのか今から非常に楽しみだ。
■ 今回の45分の得点時の
扇原と
柿谷の2人による崩しが見事に大宮アルディージャの守備を攻略していたのでそれを見ていくことにする。
まずは7分のこのシーン
中盤でのヘディングでの競り合い。ここでアルディージャはラインを上げ最終ラインを合わせに行く。その時
柿谷は一度ボール方向へ引いて
そこへ
扇原がハーフバウンドのボールを上手くダイレクトで前へパスを送る。その瞬間に
柿谷が前へ走りだす。
こうしてフリーでボールを受けた
柿谷。画像ではわかりにくいが、右足アウトサイドでトラップする事により①ボールをトラップ②前を向くのニ動作を一度に行いスムーズに次へ移行する事ができる。
こうして、止められはしたもののエリア内でシュートの形まで持っていった。
そして次は45分の得点シーン。これも上のチャンスと同じような流れだった
まずセレッソの最終ラインから左の
扇原へパスが通る。この時前線の
柿谷はオフサイドの位置。
しかし
柿谷がラインまで戻った絶妙のタイミングで
扇原がダイレクトでロングパスを入れる。
ここで
柿谷は
高橋の腕を上手く振り払い前へ抜ける。
そしてここからのトラップからゴールの流れがさすが
柿谷というテクニックを使ったゴールだったので続きを見て欲しい。
後方左からのボールに対し
体は前を向きながら右足をしっかり軸足として地に付け
左足インサイドで右へ持ち出す
そして体勢を整え
冷静に左隅へシュートを決める。
これは最初から左足で右方向へ落とし右足でシュートというイメージが最初から出来ていなければできないプレーである。
仮にこれを右足でトラップし、左に流れて左サイドからのシュートという事になりシュートコースが限定されてしまうし、利き足で打つこともできず精度を欠いてしまうかもしれない。
この辺りが
柿谷が天才と言われる所以である。
【フットボール戦略論】