ドルトムント
1 - 2
バイエルン
60
マンジュキッチ
67
ギュンドガン
89
ロッベン
クロップ監督
「試合は接戦だった。ある時点から、非常にオープンな戦いになり、我々が勝っていたかもしれないと思わせる時間帯もあった。我々は守備が非常によかったので、試合をオープンに進めることができた。違うやり方をしたほうがよかったかもしれない部分もいくつかあったが、とにかく最終的にバイエルンが2点を挙げ、我々は1点にとどまった。私は近年のチャンピオンズリーグ決勝をすべて見ているが、どの試合もある時点ではどちらが勝つか分からない状態になっている。」
ハインケス監督
「今日の決勝では序盤、なかなか本来の調子が出なかった。逆にドルトムントが素晴らしかったね。積極的にプレスをかけられ、我々は自分たちのリズムをつかめなかった。難しい試合になったが、前半から何度かチャンスを作り、ハーフタイム以降はこちらが主導権を握れた。攻めるシーンが増え、得点機もこちらの方が多かったはずだ。この後半のおかげで、勝利をつかむことができた。」
UEFA.com
ドイツ勢同士の決勝戦は互いにハイレベルな内容を見せ互角の戦いを演じた。しかしクロップ監督の元、若さを全面に押し出し戦ってきたドルトムントに対し、リベリとロッベンという大舞台、そして国際経験豊富な二人のゴール前でのしたたかなプレーによって2ゴールを奪ったバイエルンが00-01シーズン以来の欧州王座に返り咲いた。
■ 慌てず獲物の動きを待ったバイエルン
前半立ち上がりのバイエルンはドルトムントにカウンターを許す場面が多く見られた。その理由はバイエルンの攻撃の組み立てにあった。まず、攻撃の始まりはダンテとボアテングのセンターバックを起点としたパス回しから。次にそこから前線へのロングボールを利用した攻めでチャンスを作り出す。これがこの日のバイエルンの入り方だった。
こうして受け手であるマンジュキッチにボールを入れ、攻めの形を作ろうとしたがそこへうまく収まらず、その結果セカンドボールを拾ったドルトムントにペースを握られカウンターからチャンスを作りだされてしまった。それでも先制点を奪われなかったのは守護神ノイアーがしっかりセーブし最後の砦として立ちはだかったからである。
その後は徐々にバイエルンが落ち着いてパスを繋ぎ始め、そこから高く設定されたドルトムントのライン裏へロッベンが走り込みチャンスを生み出し攻撃が活性化してくる。それでも前半のうちに得点が奪えなかったのは、こちらもキャプテンとしてゴールマウスに立ちはだかるベテランGKヴァイデンフェラーがチャンスをことごとく摘み取ったからだ。
今日はドイツの特徴でもあるゴールキーパーの活躍によって、締まった試合となったことは間違いない。それと同時に、普通なら決まってしまうようなチャンスシーンを防げるGKの存在が勝ち上がるためには必要だということを再確認させられる試合でもあった。ストライカーやチャンスメイカーは試合で当然のように注目されるが、サッカーでは特別な存在であるGKも日本ではもっと語られる必要がある。
話を試合展開に戻して後半のバイエルンを分析していく。まず、なぜ後半両チーム合わせて3ゴールが生まれることになったのか。それは両チームの戦術面の変化にあった。とはいってもシステムを変えたのではない。では何が変わったのかといえばプレッシングが徐々に弱くなったということである。
少なくとも後半開始10分程度まではドルトムントの寄せも早く、バイエルンのマンジュキッチ、ロッベン、リベリにボールを入れさせないことには成功していた。しかしこの動きが90分持つわけはなく、時間が経過すると共に徐々に動きの量は落ちていった。
こうしてドルトムントのハイプレスがなくなったことで、60分にバイエルンはロッベンとリベリのコンビで守備陣を引きつけ、最後はマンジュキッチがゴール前でしっかりシュートを決め先制点を決めリードする。この後にドルトムントにPKによる失点を許すが、切り替えの遅くなったドルトムントに対して終了間際の89分、再びリベリーロッベンのホットラインから勝ち越し点を奪うことに成功。
これが決勝点となりバイエルンがビッグイヤーを獲得し、昨季決勝で敗れた借りを聖地ウェンブリ-スタジアムで返すこととなった。バイエルンのこのしたたかな戦い方はさすがハインケス監督といったところだろうか。ハインケス監督は今季で退任が決まっているため、バイエルンのこのチームはここで第一章を終えることになる。次を引き継ぐのはバルセロナを率いたグラウディオラである。いったいこのチームをどう継承するのか、どう変化させるのかという話題が来季のサッカー界の中心になることは間違いない。なのでプレシーズンからその動向を注目していく必要がありそうだ。
■ 積極性を存分に見せたドルトムント
敗れたドルトムントは決して悪い試合をしたわけではない。むしろそのサッカー・戦術は最先端を行くものだった。最終ラインを高くし、中盤をコンパクトに保ち積極的にプレッシングを掛けボールを奪う。そこからタテに早いパスを繋ぎシュートまで持っていく一連の攻守の流れは素晴らしかた。
特にゲッツェを負傷で欠く中、この試合で中央に入ったロイスがドリブル、キープ、パスとスキルの高さを見せチームの中心としての動きが目立った。実際に同点弾のPKも、選手の足が止まりかけている中でロイスのみがしっかり前線のスペースに走り込んだことで、ファールを誘うことができた。
とにかくドルトムントは若い選手で構成されたチームである。昨シーズンもその若さ故、グループステージ最下位に終わってしまったのだが、その一年後なんと決勝まで上り詰めた。それだけ選手個々人が成長した結果でもあり、準優勝は誇るべき成績だろう。来シーズンは既にゲッツェのバイエルン移籍が決まっており、どれだけの選手が残留するかはわからないが、ポテンシャルの高い選手が揃っているだけに今後の成長が楽しみだ。
■ バイエルンの先制点のシーン
①左サイドで
ロッベンからパスを受ける
リベリ。この時バイエルンの前線の4人に対し、ドルトムントの守備は5人で人数的には問題ない。
③しかしここで
リベリがキープする間に、
ロッベンは中央へ流れマークを外しにかかる。ここで
スボティッチは一度ロッベンを見ているものの、
Sベンダーとのマークの受け渡しが上手くいかずにフリーにしてしまう。
④そこで、
フンメルスは
ロッベンの裏への飛び出しに対してラインを上げて対応しようとする。
⑤だが、奥の
シュメルツァーはラインを上げきれずマンジュキッチの動きに釣られ残ってしまう。さらに
リベリがここでタイミングよく3人の間を通すパスを入れたことで、
⑥ゴール前で
ロッベンはフリーとなる事ができた。そこで
シュメルツァーはすぐさま対応へ行くが、
⑦
ロッベンがサイドへ流れ、ファーへクロスを入れたことで
シュメルツァーのポジショニングが中途半端になり
マンジュキッチはフリーでシュートを押しこむだけで良かった。このように少しの選択のズレが重なりゴールが生まれることになった。
■ アディショナルタイム、バイエルンの決勝点のシーン
①
ボアテングの自陣からのロングフィードが起点となり攻撃は始まった。
②まず中央へ流れてきた
リベリが
ピシュチェクを背負いつつしっかりボールをコントロールし、裏へヒールパスでペナルティエリアへパスを送る。この時に
ロッベンもサイドから中央へ走りこんでくるが、それに対するマークは甘い。
④こうして
フンメルスと
スボティッチも足を伸ばし止めに行くが、
ロッベンの抜け出しは早く止めることが出来ず、ゴール前への侵入を許し勝負を決める勝ち越し点を許してしまった。このシーンは、ゲーム終盤でもここまで走り込める
リベリと
ロッベンの両ウイングを大いに評価すべきだろう。クロース負傷により終盤戦に出番の回ってきたロッベンは、昨年のリベンジとばかりに大きな仕事をやってのけた。
■ 過去の関連試合
2013/04/23 UCL 準決勝 1Leg バイエルン v バルセロナ2013/05/01 UCL 準決勝 2Leg バルセロナ v バイエルン2013/04/24 UCL 準決勝 1Leg ドルトムント v Rマドリー
2013/04/30 UCL 準決勝 2Leg Rマドリー v ドルトムント
【フットボール戦略論】