前半開始時の布陣
後半開始以降の布陣(後半開始から香川と遠藤、74分に柿谷と酒井高を投入)
日本 44th
2 - 2
オランダ 8th
12
VDファールト
38
ロッベン
43
大迫
60
本田
日本
ザッケローニ監督
「デ・ヨングがいなくなった影響だったのかは分からないが、より日本がダイナミックに前に出るようなったことが大きかったと思う。」
「サイドのところでかなり攻撃が機能していたと思うし、カウンターもかなり決まっていた。特にカウンターで多くのチャンスをつくれていたのが満足できる」Sportsnavi
強豪オランダ相手に2-2のドローで終わった試合は、日本にとって長所と短所の両方が見られる、テストマッチとしては収穫の多い試合となった。
1点目のシーン「吉田の積極的な守備が実った得点」
4-
2-3-1の日本に対して、後方からのワイドなビルドアップをしてくる
4-3-3のオランダは一人多い状態でボールを回していた。そこにセンターバックの
吉田がラインを押し上げながらストロートマンにひっそりとマークに付き、パスが出たところで一気に飛び出してインターセプトを狙った。
このように、相手の守備が整っていない段階アグレッシブな守備を見せショートカウンターを仕掛けた日本。この後のシーンでも、
長谷部からパスを受ける
大迫がダイレクトでシュートできる見事なプルアウェイの動きでボールを受けられたこともあり、前半終了間際に1点差に追いつき試合を折り返すことに成功した。
同点弾のシーン「3人目の動きがうまく機能した崩し」
次は同点に追いついた60分の得点シーンを見ていく。
①
遠藤の自陣からのロングパスを受け取った
内田が右サイドから崩す。まずは
岡崎にパスを出し、
②受けた
岡崎は敵を外に寄せつつ、ワンタッチで後ろから走り込む
本田へパス。そのタイミングで
内田はマークを振りきって中へ入ってくる。
③ボールを受けた
本田もまた、敵を寄せながら後方の
内田へパスを出す。
④これで中央には一気にスペースが生まれる。そのタイミングで
大迫がDFの背後からニアへ飛び出す。
⑤
内田に対して2人のDFが寄せたことでゴール前はガラ空きに。そしてそこへ正確な縦パスが通る。
⑥このパスに対してオランダ守備陣もすぐさまシュートコースを消しに走った。しかし二度オトリとなり、後方でフリーとなった
本田へパスが通る。
⑦こうして前を向いてPA内でパスを受けた
本田がシュートをゴールへ突き刺した。
この
内田→岡崎→本田と
本田→内田→大迫という一連の動きは完璧だった。特に2人選手がパス交換をする間にもう一人が走り込む、3人目の動きの連続をされると相手にとってはボールを奪いに行くタイミングを失ってしまう。こうなると結果的に後手後手の対応となり、容易に守備陣系を崩しことができる。日本代表にはやはりこういったプレーを常に意識することを求めたいものだ。
ただし、一つだけ言っておかなければならないのは、後半からアンカーに入りで
デ・ヨングが負傷で交代した事。これによって
ブリントが代役を務めたが、オランダの攻守の繋ぎがちぐはぐになってしまったことは否めない。
こうした理由に加えて、フィジカルが強く、守備の堅いカウンターチーム相手にも同じことが通用するのかという(それこそセルビア戦、ベラルーシ戦のような)ところだけは未だに疑問であり、そういった試合を組んでいく必要はあるように思う。
守備面での積極性
また今回は守備面でも組織的なプレッシングが光った。そこで一例を挙げてみる。
①まず最初に
香川が敵陣で奪われ、カウンターを仕掛けられかねない状況ができる。周りにはスペースもありサポートにも行けない。
②そこでまず動いたのがトップに入った
大迫だった。一気に加速して守備に戻る。
③こうしてオランダが攻撃に移る前にプレスをかけ、侵攻を遅らせる。
④さらに
ロッベンがこのボールを拾い前へ出ようとするが、
長友がすかさず奪いに出る。
⑤続いて後方の
今野、前方の
大迫も囲い込みボールを奪取。相手に自陣へ入り込まれる前に取り返した一連の流れは非常に組織的だった。
オランダ
ファン・ハール監督
「日本は後半にプレッシャーをかけてきた。我々にとってはプレーするのが難しかった。日本のプレッシャーを逃れられず、後半には自分たちの試合を展開することができなかった。日本は3点目を奪ってもおかしくなかった」
「日本の1点目の前から、問題が起こっていることは分かっていた。我々のキャプテン(アリエン・ロッベン)が選手たちのポジションを動かす指示が聞こえていたからだ。彼は危険を感じているようだった」
「後半に香川と柿谷を入れたのは、ザッケローニにとって良い選手交代だった。(ラファエル・)ファン・デル・ファールトは前半の我々のベストプレーヤーだったが、彼にまでボールをつなぐことができていなかったので交代させるしかなかった」 Sportsnavi
ここまではうまく機能したシーンを見てきたが、今度は逆にオランダの得点シーン(日本の失点シーン)を見ていく
先制点のシーン「中盤のキーマン、ストロートマンをフリーにすることで生まれたゴール」
①中盤で起点となったのはやはり
ストロートマンだった。まずは後方でのビルドアップでワイドにボールを回しながら日本の守備を揺さぶり、
ストロートマンに対する
長谷部のマークが外れたところにボールが入ると、
②前線へ走り出す
ファン・デル・ファールトに一気に裏への浮き球のパスを出す。
③ここで
VDファールトはうまくトラップできずにボールは流れるが、
内田がワンバウンドのボールをヘディングで中に返したことで再び
VDファールトへ渡り先制点があっさり決まった。
この失点シーンについて
内田は「(失点につながったミスは)トラップしたら相手も来ていたし、外にクリアしたらたぶん敵もいたので、自分のなかでかなり迷いがありました。」と語る通り、状況判断ミスさえしなければ防げていたシーンではあった。今の日本代表にはこういった防げていたミスによる失点は多く、戦術的な修正ですぐにどうにかなるようなものではないとも言える。
またオランダ目線で見ると、味方をフリーにするパスワークと
ストロートマンの隙を見逃さずにロングパスを通してくるプレーは、今季ローマで活躍しているだけのことはある精度の高さだった。
追加点のシーン「左から右へのワイドな崩し」
①ここではオランダらしいワイドな攻撃が見られた。まずは中央でボールを回し、日本の中盤の選手(
本田、
岡崎、
山口)を前に引きつけておいてサイドへ展開。そしてサイドに付いてきたところで再び中央に戻す。
②こうして手薄になった中央に
VDファールトがまたしても走り込み、胸トラップから一気に右サイドへパスを出す。
③こうして
ロッベンに前を向かせて持たれてしまった日本。それでも
長友と
長谷部2人が戻り、縦と横のコースは防がれた。
④と、誰しもがそう思ったところ、
長谷部が
長友と同じく縦のコースを意識したため中にカットインしてくる
ロッベンのドリブルコースを防ぐことができず、
⑤ここでもあっさりとシュートを許し2点をリードされる展開となった。
この失点に関連することについて、試合前に
吉田はこう語っている。
「典型的なオランダっぽいサッカーでやってくると思うので。サイドに良いアタッカーがいて、ポゼッションからサイドにボールが入ったり、サイドチェンジしたりして、広いスペースで1対1を仕掛けてくると思います」
「(アリエン・)ロッベンなんか、1対1のスペースを与えてしまったり、同じ人数で守ることになるとすごく厳しいと思う。まずはサイドチェンジをさせないこと。後は常にサポートに行けるように、1対2でやれるようにしなきゃいけないと思います」Goal.com
まずポゼッションからサイドにボールが入り、サイドチェンジからロッベンが広いスペースで仕掛ける。まさに2失点目のシーンを予言(想定)していたわけだが、それでもロッベンは止められなかった。特にロッベン対長友・長谷部の1対2の状況だったにも関わらずである。もちろん、日本が前からアグレッシブにボールを奪いに出る戦術を採っていたことも確かなのだが、想定していたシーンだけにしっかり対処して欲しかった。
とはいっても、それと同時に一つだけ言っておかなければならないことがある。それは相手が世界最高峰のサイドアタッカーでもあるロッベンだったということだ。このシーンの、数的不利でも相手を振りきってゴールを決めてくる技術とスピードには世界の凄みを見た瞬間でもあった。
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