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フットボール戦略論

欧州サッカーを中心に戦術・得点シーンを画像で解説


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2013/06/04 W杯アジア最終予選 7 日本 v オーストラリア



 
日本
1 - 1
  オーストラリア

82   オアー
91   本田


  ザッケローニ監督
「相手の狙いは、フィジカルが強いメンバーで後ろを固めて、ボールを奪った瞬間に前線に出すカウンターの形であったり、サイドチェンジからのカウンターの形だったと思う。ディフェンスラインには、必ずサイドバックのどちらかが残って、センターバック2枚プラス1枚で、3枚の形でリスクマネジメントをすること、あとはビルドアップのところで不用意なパスをしないことを指示した。」
スポーツナビ

 
オジェック監督
「戦術的にも守備はユニットとして守ったし、スピードのあるカウンターもできた。ただ、こういう大事な試合で、接戦であと少しで勝てるというところで失点してしまうと、やはりがっかりする。それでもわたしは、選手にしっかり胸を張って、自分たちを疑う気持ちを持たずに自信を持って母国に帰り、ホームの2試合に臨もうと伝えた。」
スポーツナビ


勝つか引き分けでW杯出場が決まる日本は終盤、オーストラリアに先制を許しながらもアディショナルタイムに本田がPKを決め5大会連続の出場を決めた。


■ 課題のはっきりした日本


この日の日本はオーストラリアが引いてきたこともあり、本来のポゼッションサッカーが機能し主導権を握る時間が多く続いた。具体的に説明すると内田長友が加わった左右にバランスの取れたワイドなパス回し、さらに2/6のラトビア戦以来の代表での出場となる本田がトップ下に入ったことでクサビとなりキープできる状況が生まれ、衛星のように香川が動きまわることでチャンスを作り出した。


本田香川。この二人の関係性は以前から疑問視され、度々話題に挙げられていたわけだが、ここにきて二人のコンビネーションこそが日本代表の武器となってきた印象を強く感じた。こうして前半は両サイドからの攻め、そして中に絞った二列目の香川本田岡崎の中盤での連携も生き、後半もオーストラリアの運動量が落ちてきたことでボールを繋ぐプレーは継続できていた。


それでもアディショナルタイムのPKでの得点に終わり勝てなかった理由は何なのか。その一番の理由に前田の攻撃面での貢献度の少なさがあったのではないかと個人的には考えている。


例えば日本が敵陣でボールポゼッションしている段階で前田は前線で動きまわり、引いてスペースを作ろうという動きは常に見せてている。だが、積極的にボールを受けようというプレーが少なく、相手もそこまで警戒してこないのが実情である。


こうなると前田が下がって前線にスペースを作ろうとしても相手は付いていかず、香川岡崎の飛び出しが生きてこない。その結果よほどいいタイミングでのパス交換や、個人技で無理やりこじ開けるかしか選択肢がなくなり日本の組織力は生かせなくなる。


仮に前田がもう少しシュートを打つ、ポストに入るといったプレーをするようになれば相手も脅威に感じマークに付かざるをえない状況になるのだが。もちろんザッケローニ監督が前田にそういったプレー求めているのか、あるいはプレーを限定されているのかといった細かい所はわからない。しかし現状では世界の強豪と戦う場で「この選手は何かしてくる」と思わせられていない。


その意味でザッケローニ監督のハーフナーへの期待は感じられる。と同時にトップをこなせる選手が出てくるかどうか、あるいはブラジル戦のように本田をトップに置いた時に、中盤を任せられるだけの選手が育ってくるか。このどちらかはこれから確実に求められる課題だろう。


守備に関しては①後方からのロングフィード→②ケーヒルがポストとなり落とし→③ホルマン、あるいはオアークルーズがダイアゴナルに飛び出しゴール前へという攻撃パターンを徹底してきたオーストラリアに対して、今野吉田のセンターバックコンビは上手く対応していた。特に今野ケーヒルへ対しての寄せは非常に巧かった。最初こそ力強い当たりに戸惑いを見せていたが、すぐに順応してきたあたりは流石と言わせる安定の守備だった。


失点シーンに関してもサイドを突破したオアーのクロスがファーまで伸びゴールへ入ってしまうというある種偶然性の高いものだったため守備が崩されたというわけではなかったが、3人付いていて交わされてクロスまで持ち込まれたという意味で言えば、まずスライディングで飛びこまず冷静に対処しもう一人は縦を切りに行きたかったシーンでもあった。


それよりも言いたいのはザッケローニ監督の交代策だろうか。0-0で80分を経過する状況で前田に替えて栗原を入れ最終ラインを入れ替えたことで選手に戸惑いがあったことは否めない。特にこの策が1点を奪いに行く攻撃プランなのか、勝ち点1を取りに行く守備プランなのかはっきりしない交代策であったことは確かだ。


日本には06年W杯のジーコ監督時代にもオーストラリアに対して1点リードの状況で、柳沢に替え小野を投入したことでシステムががチグハグになり、3失点を食らって逆転されたというに苦い経験があった。それだけにまた同じ事を繰り返してしまった感は否めない。(それでも同点に追いついたことは評価できるが)


とは言っても、本大会前にこういった失敗を経験できたことは大きい。ともかくこうしてW杯出場を決めた以上、これからはチームの成熟、さらに勝つために何を付け加えていくのかをしっかり定めなければいけない。その意味でも最終節のイラク戦、さらにコンフェデレーションズカップは選手にとっても見る側にとっても良い指標となってくるだけに引き続き期待して見ていきたい。

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