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カテゴリー「■ コンフェデ杯」の記事一覧

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2013/06/27 コンフェデ杯 準決勝2 スペイン v イタリア



  スペイン
0 - 0 PK 7-6
  イタリア

  デル・ボスケ監督
「今日のスペインは120分間を戦った。選手たちは普段、毎週2試合を戦うことに慣れている。だから、日曜の試合で全力を出せるようになると信じているよ。どちらが試合を支配するか、どちらがよりポゼッションできるかは分からない。我々はそれにトライする。今日はイタリアがとても強く、試合をコントロールしたね」Goal.com


  プランデッリ監督
「PK戦ではあらゆることが起こるものだ。我々は常に試合に入っていた。多くのチャンスをつくり、とても良い試合をしたよ。スペインはまだ我々の前にいる。何年も前から同じコンセプトで仕事をしていたからだ。だが、我々もどんどん良くなっている」

「暑さ? このバカげたコンディションでプレーするのは難しかった。すごい湿度だったんだ。選手たちは感動的だったよ」Goal.com

無失点に抑えたイタリアとそれでも負けないスペイン



120分戦って両チーム点はなく、PK戦を制したスペインが勝ち上がったこの試合。スコアだけを見れば互いに消極的な戦いだったと思われてもおかしくないが、実際は緊張感あふれる攻防戦が繰り広げられた見応えのある試合だった。

とは言っても120分続いたかと言えばそうとは言い難い。グループリーグを戦った後という事に加え暑さの影響もあり、後半の途中からは運動量がガクンと落ちて膠着状態になる時間帯も多くなった。その意味ではW杯のトーナメントにより近いゲーム展開になったとも言える。両チームにとっては本番を見据えて良いシュミレーションになったのではないだろうか。

そこで今回は試合全体でなく、前半の両者の戦術がぶつかり合った前半をピックアップして分析し、解説していきたいと思う。



■ イタリアの対スペインの守備システム


イタリアはバロテッリがブラジル戦で負傷し離脱したことでジラルディーノがトップに入ることになり、加えてアバーテも負傷したこともあってシステムもここまでの4バックではなく3バックで挑む事となった。そしてこの3バックシステムが機能したことで、ユーロ2012の初戦の対戦と同じようにイタリアが主導権を握り試合を進めていった。


9:56のシーン

今日のイタリアはこのように最終ライン5人+中盤4人で守りスペインの攻撃に対抗した。特に特徴的だったのが中盤の4人で形成されたこの四角形である。ボールホルダー(ここではイニエスタ)がパスを出そうとしても、中央のシャビ、前線のトーレスへのパスコースをイタリアが封じているためサイドにボールを送るしかない。こうすることでまずスペインの第一手である縦へのパス&ゴーを防いだ。




23:14のシーン

そこはスペインも当然対策を練ってくる。今度は最終ラインのピケがサイドチャンジのパスをアルバに送り、右に寄ったイタリアの陣形に対して空いている左サイドから攻めこもうと試みる。




しかしこれに対してもイタリアはポジションをスライドさせしっかり対応。序盤のスペインの出鼻はこうしてくじかれることとなった。





そこでこの↑のイタリアのスライドディフェンスを詳しく解説していく。



①まずは先ほどのシーンを巻き戻して振り返る。この時点でのイタリアは4-3-3を保った状態。




②そこでイタリアの選手がどう動いたかというのが上の図。下の③と見比べて欲しいが、トップのジラルディーノ以外は全員が動いていく(当たり前ですが)。特に見て欲しいのがまず、前線2シャドーのマルキージオカンドレーバが三列目のサイドに入っている事。次に最終ラインの(画像右奥)右サイドに位置するマッジョが前に出てイニエスタのケアをするため前に出て行き、そこにセンターバックのバルザーリ(画像右奥から二番目)がマッジョの上がったスペースを埋めるようにスライドすると、全体も一個ずつズレていく。




③こうする事でJアルバはパスコースを切られパスを出せなかった。



このディフェンスに対してJアルバは明らかな苛立ちを見せた。そのシーンがこちら。


Jアルバが①のピケのサイドチェンジを見せた後の一連の動作なのだが、トラップをしつつも合間に前を確認し、前線の選手の動き出しを確認していた。画像のAとBは共にパスを出す素振りを見せているのだが、結果的にこの時にパスを出すことはなかった。それは何故かと言うと、下の④を見てもらえばわかるが当初はあったはずのパスコースがトラップ後にはなくなっていからである。このイタリアの素早いシステムチェンジを前にして、Bの後のJアルバの表情を見ると非常に苦い顔をしている事が見て取れる。(映像だとはっきりと分かりました)





④結局パスの出しどころを防がれ、シャビが戻ってボールを受ける事となり攻撃は再び振り出しに戻った。






更にこのスペインのボール回しに対して、上の二つのシーンを複合させたイタリアの柔軟な守備体型が上手く出ていたシーンがあったので是非見てもらいたい。



■ 変幻自在のイタリアディフェンス




28:19からの一連の流れ

①右サイドから中に入って中央のシャビにパスを送るシルバ。この時イタリアの守備は5+4の状態で中央のパスコースを抑える。




②そこでシャビは左のイニエスタへパスを送りイタリア守備網を揺さぶる。




③しかしイニエスタへボールが入るとイタリアの中盤はフラットな形になりワイドに開いた二段のブロックを敷いて対応。前のスペースに入り込んだペドロシルバへのパスコースを消す。





④そこでスペインは次の手を打つ。イニエスタは中央へ入りながら、イタリア守備陣を寄せながらサイドの広大なスペースへ展開。




⑤右へ開いたアルベロアはヘディングで中に折り返すが、イタリアの最終ラインはすぐにラインをサイドへ伸ばし、キエッリーニがインターセプトに飛び出す。




⑥こうしてスペインの左から中央、中央から右の揺さぶりにも完璧に対応し得点を許さなかった。






ここまではイタリアの守備ばかりを見てきたが、スペインに90分守るだけではなかなか対応はできない。そこはイタリアももちろんわかっているはずで、攻撃でもスペインの弱点を突いた攻めを仕掛けてきた。



31:30のイタリアの攻撃シーン

①自陣でシャビからボールを奪ったマルキージオが後ろのジャッケリーニに戻す。




②そこからすぐにピルロにパス。ここでスペインも寄せに行くが、




ピルロはこれを交わしフリーで待っていたデ・ロッシにパスを出す。その瞬間に左サイドではジャッケリーニが、右サイドではカンドレーバが走り出している。その時にスペインの両サイドバックはピンクのマーカーの位置で完全に遅れを取ってしまう。



④もちろんここで奪えればスペインは問題はないが、そこはデ・ロッシも流石にわかっていてすぐにロングパスを入れた。この時は左のジャッケリーニへ出したが同じようなシーンが前半には幾度かあり、特に攻め上がることの多いJアルバの裏へ出たパスで多くのチャンスを作り出した。




ただしこの試合でイタリアに得点が生まれることはなかった。ゴール前のセットプレーからデ・ロッシのフリーでのヘッド、ジラルディーノの右サイドからのクロスのダイレクトシュート、右サイドからの飛び出たマッジョのチャンスシーン。こういった得点チャンスを決めることが出来なかった事を考えると、やはりゴール前ではバロテッリがいれば・・・と思ってしまう。スペインを追い込んではいただけに悔しい敗戦だった。


対するスペインについては、今大会調子の良かったセスクがいればと思わされる場面もあったことは確か。それでも攻め手を封じられながら決して得点を許さず、PK戦まで持ち込んだことは大いに評価できる。それこそ攻め偏重で人数は少ないながらもイタリアのカウンター攻撃を防いだカシージャスピケSラモスのトライアングルの守備はブレなかった。


欧州王者兼・世界王者として世界中から研究されながらも、2011年11月のイングランド戦以来26戦無敗を誇る真の無敵艦隊スペイン。今大会決勝のホームブラジルは最高の試合になることを期待したい。


■関連試合

2013/06/16 コンフェデ杯 B1 スペイン v ウルグアイ
2013/06/20 コンフェデ杯 A組4 イタリア v 日本
2013/06/16 コンフェデ杯 A組2 メキシコ v イタリア
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