ブラジル
3 - 0
スペイン
04
フレッジ
44
ネイマール
47
フレッジ
スコラーリ監督
「我々は良い道のりを進んできた。だが、この試合は本当に信じられないものだったね。我々は世界王者を相手に最高のプレーをした。ポルトガル代表でのこと? 人生ではそういうこともあるものさ。だが今、私はブラジル代表で勝つことができた。素晴らしい選手たちとともにね」 「我々はワールドカップに向けて良い状況をつくった。国民全体が貢献してくれたんだ。来年に向けて、我々はこの団結を維持しなければいけない。全員が良い仕事をできるようにね Goal.com
デル・ボスケ監督
「彼らの方が良かった。我々は彼らをたたえなければいけない。前後半の立ち上がり、そして前半終盤に、我々はやや不運だった。だが、言い訳をしたくはない。彼らの方が良かった。ブラジルの方がよりエネルギーがあった。それがすべての動きにつながったね」Goal.com
■はじめに
この試合に関しては何度も見て色々と分析していたのですが、どう書こうか迷って放置してました。その後Jリーグや東アジア選手権があったことや、欧州リーグの移籍やプレシーズンマッチと他にも調べることがあってアップせずという状態になってしまい。。。
でもさすがに決勝だけ書かないのはどうかと思い、欧州シーズン前に仕上げようということで仕上げました。この試合に出ていた選手でヨーロッパへ移籍した選手もいますし、シーズン前に復習という事で興味ある方はどうぞ。
■ ブラジル圧勝の理由を探る
自らの長所を生かしつつも、隙がどこかにできればそこを的確に突き逃さないだけの試合運びのできるブラジルとスペイン両チームの決勝戦は3-0で結果・内容共に完勝のブラジルが勝利し3大会連続4度目の優勝を飾った。
この試合は中二日のスペインと中三日のブラジルの対戦で、終盤までもつれればブラジルが有利な状況に持ち込める可能性は高かった。しかしブラジルはそんな言い訳は許さないと言わんばかりに前半から攻め立て2点を先取。後半は47分に3得点目→52分に
SラモスのPK失敗→68分に
ピケの退場という流れを作り出し試合を完全に終わらせた。そこで今回は前半の攻防~ブラジルの3得点目までに焦点を当てて試合を分析していく。
■ ブラジルの立ち上がり
準決勝ではスペインの攻撃の組み立て対して、イタリアが自陣に全員が引き後方でボールを回させながらも縦のパスコースを切る事で攻撃を無効化し、無失点ゲームに持ち込んだ。ブラジルも準決勝のウルグアイ戦では静かな立ち上がりを見せただけに、攻撃的なスペインを相手に序盤にどう出るかが一番目のキーポイントだったといっても良い。
そのブラジルは試合開始からスペインの攻撃の組み立てに対してグループリーグ時のような積極的な姿勢を見せる。まずスペインの攻撃の組み立てを封じ込めることを前提に置き、前線の4人のチェイスはもちろん、ドイスボランチの
パウリーニョと
グスタボもボールがスペインの組み立ての中心を担う
イニエスタと
シャビに縦に入ると、執拗なくらいプレスを掛け自由にパスを出させない。
このプレスにスペインが対処しきれなかった事で主導権を一気に奪い、それが開始2分での得点に繋がった。さらに得点後も気を抜くことはなく、猛プレスを掛け続けビルドアップのパスの受け手に対して次々と襲いかかる。このブラジルの積極性は最後まで持つのか?と思わせるほどの激しいものだった。
□
10:00 スペインのビルドアップに対応するブラジル
まずはこのシーンから。先制点を奪われたスペインは後方から攻撃を組み立て、センターバックの
Sラモスが前の選手へボールを入れようとするも、ブラジルの前線の3選手(手前から
ネイマール、オスカール、フレッジ)が中に絞って囲い込む。加えて後方では次の展開に備えて2選手(手前から
パウリーニョ、Dアウベス)が
イニエスタと
マタにを挟み込んでいる事がわかる。さらにこのラインの後方には
グスタボが備えており、このシーンでは素早いパス交換で抜けだした
マタへのパスをカットして攻撃を封じた。
□
12:54 シャビとイニエスタの連携突破に対応するブラジル
①ここでは最終ラインを押し上げて、ブラジルを自陣に押しこんだシーンから始まる。まずセンターバックの
ピケから中央の
シャビへボールが渡った。ボールを受けた
シャビは左へ流れる
イニエスタへパスを出す。これはバルセロナでもよく見られるシーンだろう。
②前を向いてボールを持った
イニエスタは前へ攻め込む。これに対しブラジルは
パウリーニョ(手前)と
グスタボ(奥)の2ボランチが対応する。
③
グスタボが縦へ入り、
イニエスタは立ち止まる。そこで
シャビが
イニエスタの後方へ流れ、
④
イニエスタは
グスタボに背を向け壁となりつつ
シャビが前を向くスペースを確保。
⑤
シャビは受けたパスをワンタッチで前にはたき
イニエスタへパス。これでまず
グスタボを交わし
シャビはもう一度受けるために前へ走り出す。
⑥しかし
グスタボに倒され、ボールもいち早く反応した
パウリーニョに奪われて攻撃は終了してしまった。スペインはフィジカルで劣るため素早さで攻略しようとしたが、ブラジルはそこを完全に読んでいた。スペインはこの時、前線で
マタと
ペドロが余っている状態なので、ブラジルの2ボランチにもっとプレッシャーをかけられる動きがあれば崩せたかもしれない。
■ スペインの反攻 1
先行されたスペインもこのままで終わるわけはない。開始15分過ぎ辺りからはブラジルがギアを少し落としたこともあり、ボールを敵陣で持つ時間も増えてきた。
スペインの攻撃の中心を担うのは中央のブスケッツ、イニエスタ、シャビのバルセロナの3人となるのだが、その中央からこじ開けるという意味でもサイドにどれだけ敵を寄せて中を開けられるかが重要となってくる。今大会でも左サイドのJアルバ、イニエスタ、セスク(この試合ではマタ)のバルサ勢を中心とした崩しこそがメインとなっていた。
つまり中央を固められてもサイド攻撃で揺さぶることができるのがスペインの強みであり、ブラジルの中央が堅い事など最初から分かっていたはず。にも関わらず得点を奪うことはできなかったのはなぜだったのか。
■ ブラジルの対策 1
ブラジルはそのスペインの攻めに対してもしっかり対策を講じてきた。
Jアルバ、イニエスタ、マタの連携に対して、
フッキ、パウリーニョ、Dアウベスが守備に入り、サイドのスペースを消す。特に
フッキは攻撃の選手ではあるもののそのフィジカルを存分に生かし、体を当てて突破を防いだ。今大会で得点のなかった
フッキだが、この守備での献身性は二列目の選手の中では際立っていた。さらに
Dアウベスも無理にオーバーラップを仕掛けるようなことはなく、攻撃が停滞した時間帯でも無理に押し上げず守備に徹していたのが印象的だった
■ スペインの反攻 2
こうなるとスペインは攻撃方法を変える必要が出てくる。つまり左サイド以外からの攻撃が必要だという事だ。そこで効いてくるのが左サイドにボールを寄せておいてから右サイドのペドロへサイドチェンジで一気に打開しようという攻撃。ブラジルは右のDアウベスが上がらない分、逆のマルセロは比較的高い位置を取る事が多い。もっと言えばネイマールと共に崩す左からの攻撃が今のブラジルのキーになっているとも言える。
スペインはまさにそこを狙って攻撃を仕掛けてきた。マルセロの上がった後に出来た広大なスペースにペドロが走り込み、そこへパスを出すことで一気に数的優位を作り出しチャンスを作り出す。それが26分、さらに40分、42分と続いた攻撃シーンだった。
■ ブラジルの対策 2
しかしそれでもゴールラインを越える事をブラジルは許さなかった。それを防いだのはセンターバック、
Dルイスである。40分のゴールラインギリギリで
ペドロのシュートを防いだシーンはもちろん、
マルセロの上がったスペースを一人で埋めるのカバーリング範囲の広さと、読みの早さは見事な対応だった。このように戦術を越えて個人能力で対応できることが、勝ち上がりには必須の条件となるのだろう。
□ 26分 スペインの攻撃シーン
①
ピケが自陣からフリーで右サイドの
アルベロアにパスを通す。と同時にボランチの
パウリーニョの裏のスペース(赤いゾーン)に
ペドロが走り込む。
②右サイドでボールを持った
アルベロアに対し距離を詰める
ネイマールと
マルセロ。しかし
ペドロがノーマークとなり、
アルベロアは
マルセロが前に出たスペースを使へパスを出す。この瞬間はチャンスが訪れるかと思われたが、
Dルイスがすかさずそのスペースを埋めに走る。
③結果的に少しパスが長くなった事で
ペドロにボールは渡らず、
Dルイスにカットされた。このレベルになるとより一層精度の高いパスコントロールが求められることになる。
□
40分 スペインの攻撃シーン
①左サイドでボールを持った
マタが自陣から前方の
トーレスへ縦パスを入れ、さらに自ら前方へ走り込む。
②パスを受けた
トーレスはDFを引きつけつつ前へ飛び出した
マタへ縦パスを送る。ブラジルはセンターバックの
Tシウバが引き出された上、
Dアウベスも
マタに裏を取られてしまった。
③最終ラインは
Dルイス一人となってしまったため、急いで
マタのドリブルコースを防ぎに行く。しかしここでまたは右サイドから走りこんだ
ペドロに絶妙のパスを通す。
④エリア内へ侵入した
ペドロは、
Jセーザルと一対一の決定機を迎え同点に追いついたかと思われたが、ゴールラインギリギリで
Dルイスがシュートブロック。このシュートをゴール上へ跳ね上げた
Dルイスの技術には驚くしかなかった。
■ ブラジルの反攻
こうしてスペインの攻撃を防いだブラジルは、直後の44分にカウンターから
ネイマールが追加点を挙げて前半終了間挙げるという最高の展開で前半を終了する。
この日もスペインの右サイドバックとして出場した
アルベロアは守備的な選手であり、攻撃参加での貢献度は低い。それはRマドリーでも同じことであり、今回の試合でも
ネイマールと
マルセロの攻撃を防ぐ事が求められていたはずだ。にも関わらずここまで圧倒されてしまったのはコンディションの影響が大きかったのだろうか。
アルベロアは今季Rマドリーで終盤戦を欠場しまで調子が上がっていたのかは判断が難しい。
逆にコンディションに問題がないとすれば
ネイマールが脅威だったということになる。バルセロナに
ネイマールが加入することを考えれば来季リーガでマッチアップする可能性が高いだけに、クラシコでの対決で真意を見極めたい。(ちなみにリーガでのクラシコは10月後半の第10節カンプ・ノウで対戦予定)
□ ブラジルの2点目のシーン
①自陣でボールを奪い速攻に出たブラジル。ゴール前でパスを受けたネイマールは縦のコースを防がれたため、一旦後方のオスカールへボールを戻す。
②これに対しスペイン守備陣は対応へ出るが、ここで
ネイマールをフリーにしてしまい、そこへ
オスカールはパスを送る。本来なら
アルベロアがこのコースを抑えるべきなのだが、、、この辺りの
ネイマールの飛び出しへの対応は終始危険だった。
③こうしてパスを受けた
ネイマールがニアの右上ートを放ちリードを2点差に広げる事となった。
■ 後半も隙を見せなかったブラジル
追い込まれたスペインは後半開始からデル・ボスケ監督はネイマールのスピードに手こずっていたアルベロアに替えてアスピリクエタを投入。またこれは2点差の状況から追いつな選手を入れたとの見方も出来るだろう。
しかしその策も虚しく、後半から再びハイプレスを強めたブラジルを前にスペインの最終ラインでのビルドアップは封じられ、後半開始2分後には再び得点を許してしまった。この時のスペインを見直すしての対処が出来ておらず焦っている様子が見て取れた。
あれだけボール回しで崩すことの出来るスペインをこうして無力化したブラジルの戦術は、少なくとも今大会では他を寄せ付けないものであったし、その組織力はブラジルとは洗練され、献身性の高いサッカーを見せてくれた。
特に、アグレッシブに行く時間と相手の攻撃を受け流しつつカウンターを狙う時間帯を選手全員が共通理解しているかの様に連動するところは素晴らしかった。時間とともに経過は変わりつつも足並み揃えて戦えるセレソン。地元開催ということも手伝って、本体会でも確実に本命候補であることを改めて認識させられるコンフェデレーションズカップであったことは間違いない。それと同時に各国が対策を練ってくる事は確実で、この状況下でスコラーリ監督が後一年どんなチームに仕上げてくるのか楽しみで仕方ない。