マンチェスターC
0 - 1
ウィガン
91
ワトソン
マンチーニ監督
「我々はこの敗戦に失望しており、ファンのために失望している。4万人のファンがここにいた。非常に残念だ。難しいシーズンだったよ。目標はプレミアリーグ制覇だったが、優勝できなかった。いつも勝つというのは不可能だ。カップ戦で優勝するチャンスがあったが難しかった」
Goal.com
Rマルティネス監督
「大きな誇りだ。サッカー界で有数の主要タイトルを手にしたのだからね。我々はパフォーマンスでも示した。立派な勝者だったと感じる」
「2週間前に(リーグ戦で)シティと対戦した。そのときはゴールを決められなかったが、パフォーマンスは似ていたと思う。前半はチャンスを得たが、それを決めなければいけないと感じた。そのキャラクターを後半も繰り返したのは驚きだったね。後半はシティを止めた。退場者が出た後は、我々がコントロールしていたよ」
Goal.com
■ プレミアリーグで下位に低迷し降格圏内をさまようウィガンだが、FAカップ決勝のこの試合ではリーグ2位に着けるマンチェスターC相手に試合巧者ぶりを見せつけ勝利し、1932年の創設以来初のメジャータイトル獲得となった。
シティの敗因
今日の試合ではシルバも復帰し、GKがハートでなくパンティリモンであること以外(マンチーニ監督がFAカップではパンティリモンを使うと明言)は万全の態勢で挑むこととなった。それでも得点が奪えず、勝つことができなかったのはなぜだったのか。ゲーム展開を振り返ちながら探って行きたい。
攻撃面では開始から冷静にボール回しを行ってはいたが、見ていてあまりにも落ち着き過ぎという印象すら持たされる序盤だった。そのため前線の4選手(アグエロ、シルバ、テベス、ナスリ)にはなかなかボールが回らず、攻撃は活性化しない状況が続く。
こうして打開策を見つけられない状況で、マンチェスターCはある戦術を多用してきた。それはウィガン3バック裏へのロングボールである。最初こそ後方のバリーやコンパニーから中央にロングボールを入れてはいたがマンチェスターCの前線のメンバーは素早い選手が多く、身長では勝つことが出来ない。
そこでペナルティエリア外のサイドにパスを供給し、そのスペースへ4人が素早く走り込む戦術を採るようになり、やっと攻撃が機能し始めてきた。特に左サイドのナスリとクリシーがウィガンCBのボイスとWBのマクマナマンの間のスペースに走り込む事が多かった。これに関しては試合中にマンチーニ監督からナスリに直接指示が出ている場面がカメラで捕らえられており、途中で修正を図ったものだと思われる。
前半終盤はこうしてチャンスも掴んだが、開始からのゲーム展開もあって、またウィガンの戦術が効いていたことも合って(詳しくは後述)点は奪えなかった。後半に入ってもこの状況は続き、また両者とも守備重視で最終ラインは高く上げなかった事で試合は手詰まり感が出てきていた。
そこでマンチーニは動く。後半途中55分にナスリに替えミルナー、69分にテベスに替えロドウェルを入れるとシステムを3-6-1に変え得点を狙いに行くという意思を見せる。しかしこの采配は機能したとは言いがたく、選手たちも役割とポジションをはっきりさせられていないように見受けられた。今シーズンここまでも3バックシステムは度々披露されてきたが、見た試合の限りでは機能している場面を見たことがなく、このあたりの采配というのは毎回疑問視せざるを得ない。
こうし変則システムを使用した結果もあり、84分にサバレタが2枚目のイエローカードで退場すると数的不利となりコーナキックから失点し敗北を喫した。ここまで守備面では大きな問題もなくウィガンの攻撃をしっかり防いできただけに、まさに自滅とも言えるような後味の悪い敗戦だった。
■
マンチェスターCのサイドのスペースを突いたチャンスシーン
①
コンパニーが
マクマナマンが上がったサイドのスペースにロングパスを入れ、
ナスリがそこに走り込みボールを受ける。
②ゴール前でキープする
ナスリはここから
マッカーサーと
ボイスの守備を交わし中へ切れ込む。それと同時に右から
シルバが中央に寄ってきて、
③
マッカーシーと
Jゴメスの裏のスペースへ走り込む。
④そこへ
ナスリがタイミングよくパスを出しエリア内で前を向き潜入することに成功。
⑤そしてDFをギリギリまで引きつけマイナスのパスを出すと、そこへ
テベスが走り込み、
⑥フリーでシュートを打てたものの
ロブレスが足で弾きゴールとはならなかった。この時間帯は上手く攻撃が機能し、完全に崩しきっていただけに得点を奪っておきたかった。
最後まで貫き通したウィガン
勝利したウィガンは今日の試合では3-6-1のシステムを採用。そして開始から守備重視で両WBが下がった5バックの状態が続き、マンチェスターCの攻撃をまず抑えることを前提とした戦術を見せる。
まず、ボールを奪うとWBのマクマナマンとエスピノーサが全力でオーバラップし速攻でマンチェスターCのゴール前まで迫る。マクマナマンは主に攻撃の軸としてボールを受けると積極的に自ら仕掛け、エスピノーサは豊富な運動量を生かし、攻めてはサイドをえぐり守っては激しくチェイスし、攻守両面で活躍し、自分たちの攻撃の時間を作り出せていた。
こうして攻める機会は多かったものの、マンチェスターCの守備もサイドバックはリスクを冒して上がってくることもなかったためにやはり堅く、なかなか崩せない状況が続いた。また守備的なシステムだったこともあって、自軍の低い位置からゴール前まで運んでも連携で崩せるほどの人数がゴール前にはおらずに、得点には結びつかない前半となった。
後半はその速攻も時間経過とともに少なくなり均衡状態へ入った。しかし前述のようにマンチェスターCのサバレタが退場したことで勢いを増したウィガンは、ロスタイムにマローニーの右からのコーナーキックを81分から交替出場していたワトソンがヘディングで決め、価千金の決勝ゴールでウィガンが栄冠を勝ち取った。この勝利はRマルティネス監督がしっかりとマンチェスターC対策をした結果でもあったと言えるだろう。
追記5/14 惜しくもプレミアリーグは降格が決定してしまったが、スペイン人のロベルト・マルティネスの戦術はアイディアに優れ昨季から続けてプレミアリーグで3バックを採用し戦ったことは評価したい。度々上位クラブ就任の話題も上がるだけに今後の動向が気になる監督の一人である。
【フットボール戦略論】