2012/06/03 日本 vs オマーン 分析【本田と香川の関係性の変化】アジア最終予選の初戦を見事に勝利で収めた日本代表。前・後半共に開始10分程度で得点を奪う理想的な展開でした。今回は試合後の選手コメントを元にオマーン戦を検証していきます。
システムはこれまでにもやってきた4-2-3-1で、選手達が一番慣れている形でした。前半15分までの攻撃の方として特徴的だったのは長友・内田両サイドの積極的な攻撃参加です。この二人が上がることで左サイドの香川は中央へ、岡崎は前線に上がることが可能となります。
さらに遠藤が、上がった長友の後ろに陣取り攻撃をフォローすることで、先制点さらにはその後のゲームの主導権を握る展開へと進めて行くことができました。長友自身もサイドを突いて行けと指示されていたようです。
しかし、前半は終始ペースを握っていたにも関わらず一点差に留まりました。これに関しては香川と本田の位置取りが重要な要素になっていたように感じました。下図のように、前半30分頃の攻撃は最終ラインでボールを回している時に両選手とも下がってボールを受けに来ていました。このため前線の前田と岡崎が孤立してしまいうまくスペースを活かす攻撃が少なくなっていました。
このあたりは香川本人も難しいと感じていたようです。実際ボールをキープしてさばくのか、あるいは前に飛び出すのかという選択がうまくいっていなかったように感じました。そのあたりのバランスをどう修正してくるか後半期待していたのですが、見事に立て直しができていました。
詳しく見ていくとキーとなるのは香川と本田のタテとヨコの関係です。前半はヨコの関係ばかりでボールが前に進むのが遅く、また二人の距離も狭く能力を生かしきれていませんでした。
これが後半修正されて、どちらか一方が前出れば一人は後ろへ下がりボールを受ける、そしてボールを受けると前の選手へパスを出す。さらにボールを貰った方が敵を寄せ付けるともう一人は前へ走るという攻撃が機能していました。パスアンドゴーは基本的な戦術ですが、前半は二人ともに連携を気にしすぎてうまく意識できていませんでした。
さらにサイドバックが上がって持った時にはヨコの関係になるのですが、この時も二人の位置関係が狭くなりすぎずに程よい距離関係が保たれていまいた。このあたりはザッケローニ監督が言っていたパスの距離を2-3メートではなく、15メートルくらいの距離感で早いリズムでパスを回しオフ・ザ・ボールの動きを止めないという理念にバッチリ当てはまっています。
上図 タテの関係になることで1の状態から2のタテ・ヨコへ2つの動きの選択ができるようになりスペースを有効活用し戦術が広がる
後半51分の前田のゴールはそれが生かされていました。長谷部が本田への前のパスを通すと前に位置取っていた香川へパス。その後本田が更に前のスペースへ走ることで、オマーンの選手は引きつけられスペースが空きます。そこを突き香川が中央へ切り込み飛び出した前田へ絶妙のパスを送り、得点が生まれました。このようなプレーの連続が三点目のきっかけとなる前田のシュート前にも見られていました。
このようなプレーを続けていくことが出来れば相手を切り崩すことは可能です。オマーンが極端な守備的布陣を引いてこなかったせいもありましたが、初戦としては後半修正できたことは大きな成果でした。
あとは長谷部がどこでパス回しからのスイッチを入れるかが課題と語っていた点ですが、これもヨコの関係を続けてサイドバックとパス回しをしつつ、どこかでタテに飛び出していく選手に連続してボールを当てていくダイナミックな攻撃ができれば克服できるでしょう。
次のヨルダン戦もシステムに大きな変更はないでしょうからこの点をポイントに試合を見ていくと面白いかと思います。やはりこの二人の連携が機能すると本当に魅力的なサッカーになりますね。